2013年12月7日土曜日

スタートアップサービスと広告の違いが無くなってきた

先日、Yahoo! JAPANインターネットクリエイティブアワード(通称:ヤフクリ)の受賞作が発表されました。私は大学に入学して以降、IT業界と広告業界の重なる部分で活動してきたので、著名な広告賞は必ずチェックしているのですが、今はVCの世界に足を踏み入れたからなのか、ヤフクリを見ていて強く感じることがありました。

■ヤフクリのGRAND PRIXはHONDAの"RadMovies"

RoadMoviesは、"ドライブの思い出をより豊かなものに"というHonda インターナビの想いを形にしたカメラアプリ。 1~3秒程度の動画をいくつか撮ってフィルタと音楽を選ぶだけで、簡単に雰囲気のある映像が作成できるというもの。


このアプリは2012年12月にローンチされ、現在では若年層を中心に300万DL以上を獲得しているとの話。もともとは車の中から撮影することを想定に企画されたようですが、ドライブに限らず日常の様々なシーンで活用されているようです。

■オウンドメディア(広告)のサービス化
こうしたいわゆる広告の一環として制作されたアプリを、マーケティング的なゴール云々は置いておいて、ブランド持つをコンテキストを排除して見ると、ターゲットユーザーのニッチさやマネタイズは後回し(広告なので必要ない)でユーザー獲得という状況が特にシード期のスタートアップのサービスに酷似しているように思えます。

RoadMovies 以外にもハイネケンがローンチしたUEFAチャンピオンズリーグを観戦しながら行動を予想して得点を競うアプリ「Star Player」や、 車の後部座席に座る子どもに向けてTOYOTAが開発した「Backseat Driver」など、もはや広告の枠を超えてオウンドメディア( 用語の詳しい説明はこちら)がサービス化してしまっているという現状があります。

(Star Player)

(Backseat Driver)

インバウンドマーケティングなる手法も叫ばれる昨今、この変化には広告主の広告に対する考え方の変化が見て取れます。AKQAのレイ・イナモト氏の言葉を借りれば、メディアが多様化する中でユーザーの360°包括的にメッセージを伝えることなど到底不可能で、そのかわりユーザーとの365日の接点を作っていくことが重要視されるようになってきたということ。「派手で興味を引くもの、ファンは短時間で刈り取るもの」から「消費者の役に立つもの・使ってもらうもの、ファンは時間をかけて育てあげるもの」へその性質が変異しつつあります。

■"広告っぽい"と言われないサービスにするために
長期的視点でプロダクトの成長戦略を大きく描くことがスタートアップにとっては大事なのではないでしょうか。
サービスっぽいオウンドメディアは結局のところ特定のブランドに対する売上なり好感度なりを向上させることが目的にありますので、ユーザー数・投稿されたコンテンツ数が一定に達したら××する!!といったいった"次の展開"は持ち合わせていないと考えられます。仮にあったとしても、広告主、代理店、プロダクションとの諸々の調整がそれなりの期間必要となってくるので、スタートアップはそれらの速度を上回るでの開発・運用能力が求められます。